Friday 22 January 2021
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1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本では新たな長期的成長戦略が模索されてきた。2020年9月の政権交代の際、政府は2050年までに日本の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにし、また社会・経済のデジタル変革を実現する具体的な公約を発表し、大きく舵を切った。持続可能性とデジタル分野を合わせて取り組むことで、世界第三位の経済大国、日本が長年にわたって求めてきた新しい成長の起爆剤が生まれるだろう。

しかし、こうした公約にもかかわらず、脱炭素の実現は容易ではない。国内の既存の発電施設、交通や通信システムは、気候変動のための削減目標が定められたパリ協定以前のものであるため、今後、適応したインフラへの転換が求められる。それらの大規模で、中央集中かつタテ社会型のデザインや業務は、将来的に実質ゼロを実現するには、あまりに炭素集約度が高すぎるからだ。2050年の削減目標を実現するには、より分散型の「スマートグリット」を構築し、再生可能エネルギー分野にかつてない重点的な投資を行う必要がある。

このような変革は「スマートシティー」を発展させ、超高齢化社会の中で過疎化に苦しむ地域の活性化にもつながる。しかし、一次エネルギーの91%を化石燃料によってまかなっている日本にとって、こうした変革は恐ろしくコストのかかるものであるため、サステナビリティに加え、デジタル分野でも遅れをとってしまいかねない。
ESG、SDGSへの関心も多岐にわたっており、ESG投資は確かな流れになりつつあります。

将来を見越した変革に必要な資本の投入にあたっては、諸々の金融市場が鍵となる。長きにわたり日本が抱え続け、低成長とデフレにより更に増大化した貯蓄も財源として投入できるようにしていく必要があるだろう。日本企業のバランスシート上の現預金は200兆円(1.9兆 USドル)以上に上る。家計の貯蓄も20年ぶりの高水準に達した。

BNPパリバ証券株式会社 グローバルマーケット統括本部のチーフESGストラテジスト、中空 麻奈によると、日本企業はすでに「気候関連財務情報開示タスクフォース( TCFD) 」といったグローバルな発展を綿密に研究しているほか、 今後の自分たちの環境、社会、ガバナンス (ESG)の実績に対して、投資家たちのさらなる視線が集まると認識している。

「日本企業はTCFDやそれに則したディスクロージャーに腐心をはじめ、日本の投資家は明らかに2020年になって、その必要性を重んじ始めたと言えます。実際に関心を持ち、対話を始めた企業や投資家は2020年になって急増しました。」 」と言う。

金融政策とともに、菅内閣にはコロナ禍が続いても企業と家計が安心して投資を行えるよう適切な財政政策の実行が求められている。

中空は、日本政府はグリーンボンド発行に向けて、より一層の取り組みをしていくだろうと言う。

「現時点では日本国債でのグリーンボンド発行は検討されていないものの、機運は高まりつつあります。また、日本銀行や金融庁など監督当局のESG、SDGSへの関心も多岐にわたっており、ESG投資は確かな流れになりつつあります。」とのことだ。

分散型電源

こうした刺激策は永続的な利益をもたらさなくてはならず、自立分散型の再生可能エネルギーシステムは政府にとって有望な支出対象の候補である。いま日本は2040年までに49ギガワット、世界第3位の洋上風力発電国なることを目指しているほか、 アジアにおける実質ゼロに向けた動き の先頭に立とうとしている。

ビッグデータとブロックチェーンの発達によって、分散型での再生可能エネルギーの供給ネットワークが可能になり、 余剰エネルギーも公正かつ効率的な手段で取引できるようになる。モノのインターネット (IoT)と5Gの技術によって、従来の発電所を中心とした「トップダウン型」のシステムに取って変わるような、こうしたシステムの実現性はさらに高まっている。

またこのような投資は日本の経済成長を後押しするだろう。地震が頻発する「環太平洋火山帯」に位置するこの国は、とりわけ地震や津波への耐性が極めて重要となる。福島原発に被害をもたらし、その後原子力稼働が事実上実行不可能になってしまった2011年の東日本大震災を見てもその点は明らかだ。

停電が生産力や生活レベルに大打撃をもたらさないようにするためにも、国はエネルギー安全保障のためのインフラに投資をしてきたが、それは発電所が発電機能も配給プロセスのすべてを一手に握るという、非常に中央集権的かつ「トップダウン」の構造になっている。 

当初は軍事用通信ネットワークとして開発されたインターネットが、急速に商業用通信に拡がったように、電力ネットワークもスマートグリッドへと分散化することで、より強固で柔軟、かつ回復力のあるシステムにすることができる。

こうした自給自足型のスマートなネットワークはより分散型で、より自立したスマートシティーの開発に役立つ。日本もまたそれによって自然災害に対する 回復力を強くしていくほか、炭素集約度を下げ、こうしたスマートシティーの建設時または運営段階で投資家たちを惹きつけるだろう。 そしてスマートシティーの建設は日本経済の持続的な再生を促進させられるだろう。 

さらに何が起きるのか?

1990年から2017年にかけてCO2排出量を28%削減しながらも経済規模を77%拡大したスウェーデンの例からもわかるように、より多くの化石燃料を燃やせば経済成長が見込めるわけではない。 また日本の実質ゼロへ向けた道のりは、様々な課題はあるが、アジア太平洋地域のもうひとつの経済大国でありながらも、いまだ脱炭素化へのコミットをしていないオーストラリアにとっても有益かつ参考となる点があるだろう。

日本にとってもオーストラリアにとっても、パンデミックがもたらした金融刺激策はエネルギー戦略や将来の経済のあり方を決断する機会となる。オーストラリアは天然ガスを自国の電力ネットワークの基盤とする選択をした。脱炭素化へのコミットメントをした日本は、スマートグリットや再生可能エネルギーの可能性を獲得すべく今、相当な投資を強いられる。もし日本がこうしたエネルギー転換とデジタル変革を組み合わせられれば、新しい成長戦略の土台となるだろう。

※本記事は英語で発行された記事の抄訳となります。原文をご覧になる場合はこちらをクリックしてください。

※金融商品取引法第37条に定める事項の表示はこちらをクリックしてください。
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